2010年05月26日 23:03
天津にあった小さな茶店で買った鉄観音が、私の初めての中国茶だった。
きれいに整備された商店が建ち並ぶエリアに、その店はあった。
2週間の北京での滞在を終えて日本に帰国する1日前、中途半端に余った中国元を使ってしまおうと考えていた私は、偶然見つけたその店で茶葉を買おうと決めた。当時、殆ど中国茶の知識を持っていない私にとっては、その行動は今から想うと結構なチャレンジだった。
店にはいると、こぢんまりとした新しい店内の壁三方にある作りつけの棚に、ずらりと大きい茶缶が並んでいた。店員は、シンプルだが小綺麗な制服を着たおばちゃん3人。地元民とおぼしき身なりの良い夫婦が丁度茶葉を買っていた。
買い物をしている夫婦を尻目に、棚に並んだ茶缶を眺める。当然ながら、何がなんだか殆ど解らない。辛うじて解るのは鉄観音ぐらいだ。缶にはそれぞれ一斤(500g)の値段も書いてあり、鉄観音は150元(当時のレートで2000円強)ぐらいだったと思う。そのとき私は300元弱を使い切りたかったので、それでは少し安いな、と思った。その鉄観音の斜め上には、一斤250元ほどの茶葉があった。それを買うか、鉄観音と何かを買うか。暫く私は考えた後、高い方の茶葉を買おうと決意して、店員のおばちゃんに声を掛けた。
「あれを1斤欲しい」
当時、私は中国語が殆どわからなかったので、身体言語での会話である。
だがしかし、おばちゃん3人は声を揃えてこう言った。
「やめときやめとき!」
勿論言葉はわからない。でも間違いなくおばちゃん3人はこう言った。身体言語で理解した。
理由はわからないが、そのお茶はお勧めではないらしい。その理由を尋ねる言語力は当時の私にはなかったが、そこまで強く制止されるものを無理に買うことも無いだろうと思い、「じゃあ、あの鉄観音にする」という事を再び身体言語で言った。
今度は3人とも、「ああ、それならいい、それにしときそれにしとき!」と、またしても声を揃えて言った。今度も身体言語で理解した。
こうして私は、鉄観音という茶葉を買って、日本に帰った。
帰国してから、折角だからちゃんとした煎れ方で煎れようと思い、図書館から中国茶の本を借りてきて、その本に書いて有るとおり、小さめの急須に茶葉を入れ、沸騰したお湯を注ぎ、時間を計って湯飲みに注いだ。
驚いた。
それは、それまで私が飲んだ事のある、どんなお茶とも違っていた。水の色は黄金色で、さわやかな香りの奥に、微かにミルクのような濃厚な香りがある。青臭くなく、苦くもない。飲んだ後に、胃からも何とも言えない爽やかな呼気が上がってくる。
今まで私が飲んできた、缶に鉄観音と書かれたあの飲み物は何だったのか。
それが、それまで私が持っていた中国茶に対する認識を一気に刷新した、私と中国茶との初めての出会いだった。
きれいに整備された商店が建ち並ぶエリアに、その店はあった。
2週間の北京での滞在を終えて日本に帰国する1日前、中途半端に余った中国元を使ってしまおうと考えていた私は、偶然見つけたその店で茶葉を買おうと決めた。当時、殆ど中国茶の知識を持っていない私にとっては、その行動は今から想うと結構なチャレンジだった。
店にはいると、こぢんまりとした新しい店内の壁三方にある作りつけの棚に、ずらりと大きい茶缶が並んでいた。店員は、シンプルだが小綺麗な制服を着たおばちゃん3人。地元民とおぼしき身なりの良い夫婦が丁度茶葉を買っていた。
買い物をしている夫婦を尻目に、棚に並んだ茶缶を眺める。当然ながら、何がなんだか殆ど解らない。辛うじて解るのは鉄観音ぐらいだ。缶にはそれぞれ一斤(500g)の値段も書いてあり、鉄観音は150元(当時のレートで2000円強)ぐらいだったと思う。そのとき私は300元弱を使い切りたかったので、それでは少し安いな、と思った。その鉄観音の斜め上には、一斤250元ほどの茶葉があった。それを買うか、鉄観音と何かを買うか。暫く私は考えた後、高い方の茶葉を買おうと決意して、店員のおばちゃんに声を掛けた。
「あれを1斤欲しい」
当時、私は中国語が殆どわからなかったので、身体言語での会話である。
だがしかし、おばちゃん3人は声を揃えてこう言った。
「やめときやめとき!」
勿論言葉はわからない。でも間違いなくおばちゃん3人はこう言った。身体言語で理解した。
理由はわからないが、そのお茶はお勧めではないらしい。その理由を尋ねる言語力は当時の私にはなかったが、そこまで強く制止されるものを無理に買うことも無いだろうと思い、「じゃあ、あの鉄観音にする」という事を再び身体言語で言った。
今度は3人とも、「ああ、それならいい、それにしときそれにしとき!」と、またしても声を揃えて言った。今度も身体言語で理解した。
こうして私は、鉄観音という茶葉を買って、日本に帰った。
帰国してから、折角だからちゃんとした煎れ方で煎れようと思い、図書館から中国茶の本を借りてきて、その本に書いて有るとおり、小さめの急須に茶葉を入れ、沸騰したお湯を注ぎ、時間を計って湯飲みに注いだ。
驚いた。
それは、それまで私が飲んだ事のある、どんなお茶とも違っていた。水の色は黄金色で、さわやかな香りの奥に、微かにミルクのような濃厚な香りがある。青臭くなく、苦くもない。飲んだ後に、胃からも何とも言えない爽やかな呼気が上がってくる。
今まで私が飲んできた、缶に鉄観音と書かれたあの飲み物は何だったのか。
それが、それまで私が持っていた中国茶に対する認識を一気に刷新した、私と中国茶との初めての出会いだった。
